東邦大学 理学部生命圏環境科学科 講師
運営委員からのコメント:
尾崎さんは東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻(田近英一研究室)で学位取得後、東京大学大気海洋研究所地球表層圏変動研究センター(横山祐典研究室)で4年間ポスドクをされていました。運営委員の窪田とはこのときに同じ研究室に所属しており、研究室ミーティング・セミナー・飲み会等を通じた交流が始まりました。物質循環に関する知識が膨大で、研究室ミーティングの新着論文紹介では、あらゆる物質循環・素過程の知識をわかりやすく解説されておられて驚かされました。その後、伴侶を連れて渡米され、ジョージア工科大学のChris Reindard博士のもとで研究を続けられました(NASAのPostdoctoral Program Fellow)。若く、エネルギッシュなPIで、「顔を合わせる機会がほぼない」という話を一時帰国の際に伺ったのを覚えています。2018年に現所属である東邦大学の講師に着任され、現在は研究室のPIとして多くの学生を指導されています。
尾崎さんの興味は、地球システム全体を数式として記述することです。大気海洋研究所でのセミナー発表の際に、SF作家カール・セーガンの写真を見せながら、「世界を可能な限り理解して、あぁいい人生だったと思いながら死にたい」という話をされていたのが印象に残っています。尾崎さんの興味は非常に広く、深く、そして様々な時代に及びます。出会った当初は、特に地球表層システムの過去・現在・未来の物質循環モデラーという印象を持っていましたが、いまや宇宙への物質の散逸や太陽系外の惑星環境のモデリングまで手がけられており、知的好奇心の化け物のようなエネルギッシュな研究者です。
研究のきっかけは、田近英一教授らが開発した海洋生物化学循環モデルだったようですが、それに改良に改良を重ねて開発された、CANOPSと名付けられたモデルが尾崎さんの現在の武器です。地球の炭素・窒素・リン・硫黄・水素・酸素といったあらゆる物質の循環がモデル内で再現されています。学部時代は理学部物理科所属だったそうですが、「堆積物の続成作用」や「微生物の代謝」といった、化学・生物・地学分野のあらゆる知識を貪欲に吸収し、重要と思われる過程はすべてモデルに組み込む、というスタンスは一貫しており、まさに「地球惑星システム科学」の理念を体現した研究者と言っても過言ではありません。
2019年には日本地球化学会奨励賞を受賞され、地球化学の進歩に大きな貢献をもたらす研究を精力的に続けていらっしゃいます。また、昨年のショートコースではともに運営に携わって頂きました。コロナ禍という特殊な状況下で行われた初めてのオンライン開催でしたが、様々な意見を出していただき、企画の成功に貢献いただきました。若手・学生のエンカレッジに関しても、非常に積極的な研究者です。
今回のご講演では,尾﨑さんの最新の論文(Ozaki and Reinhard, 2021): 惑星大気の脱酸素化/生物圏との繋がり/系外惑星の大気とハビタビリティなどについてご講演頂きます。エネルギッシュかつ魅力あふれるご講演を,非常に楽しみにしております。
(担当: 窪田,橋口)